高齢者の施設内孤独死事件とSNSでの発信について考える

考察

先日、有料老人ホームに入っていた高齢者の方が死後十数日も発見されなかったという事件が発生しました。

この事件を受けて、多くの介護職の方々がSNSでそれぞれの意見を発信していたのですが、その内容にびっくりしてしまいました。

なぜかというと、その意見の多くが「介護保険を利用せず食事も自室で自分で作っていた。こういうことは特異的ではあるけれども仕方ない側面もあるんじゃないか」という内容だったから。

今日のブログは、なぜ私がその意見に驚いたのか、この事件のキーポイントを説明しつつ解説します。

亡くなった方を取り巻く環境

今回お亡くなりになった方は、有料老人ホームに入居していました。

有料老人ホームには、介護認定を受けた人が入居し介護サービスを受ける「介護付き有料老人ホーム」と、生活支援等のサービスがついている「住宅型有料老人ホーム」そして食事等のサービスがついた「健康型有料老人ホーム」があります。

このうち、住宅型と健康型は介護認定を受けていなくても入居ができます。

亡くなった方は、自分の部屋で料理をして自分で食事を食べていたようですから、住宅型もしくは健康型に入居していたと思われます。

調べたところ、介護付きと住宅型もしくは健康型が一緒になったタイプの施設に入居されていました。

自立した生活を送られていたようですが、5月に入って家族に体調不良を訴えたこともあり、家族が施設に見守りを求めていたとのことでした。

有料老人ホームの定義

ここで問題となるのが、有料老人ホームの体制です。

厚生労働省によると、次の4つのサービスのうちいずれか1つ以上を提供する施設を有料老人ホームと定義しています。

・食事の提供
・入浴、排泄、食事の介護の提供
・洗濯、掃除などの家事の供与
・健康管理

これは、健康型と介護付きの区別については明言されていません。

つまり、どちらでもこの4つのうちどれか1つ以上のサービスを提供していなければ有料老人ホームと呼ぶことはできないということになります。

今回の事件の問題点

では、今回の事件はどこに問題があったかと言うと、施設側は安否確認を怠ったという点に尽きると思います。

では、施設側に安否確認の義務はあったのか。

ここで話題になったのが、「介護保険を使用していない人の安否確認の必要性」です。

有料老人ホームの定義を見てもらえればわかるかと思いますが、入居者が介護保険を利用しているかどうかと提供すべきサービスには何の因果関係もありません。

有料老人ホームである以上、どのタイプだろうが、入居者が介護保険を利用していようがいなかろうが、4つのサービスのいずれかもしくは複数を提供しなければならないのです。

この4つのサービスは、入居者に実際に会って行うサービスですから、その内容には安否確認が含まれていることは誰でも想像できることと思います。

つまり、有料老人ホームは利用者の介護保険の利用の有無を問わず安否確認は行う義務がある。

しかし、この施設では何らかの事情により安否確認を行っていなかった。

この行為そのものが違反行為であることは間違いないと、私は解釈しています。

なぜSNSでは施設の違反を「仕方がない」と捉える人が多かったのか

では、なぜSNSでは安否確認が行われなかったことに対し「仕方ないことではないか」ととらえた意見が多かったのでしょうか。

その大きな理由のひとつが、「介護保険を利用していない」人が亡くなったこと。

有料老人ホームの定義には、介護保険の利用の有無は書かれておらず、「老人を入居させ」る施設であることが明記されているだけです。

なのに、介護保険を利用しているかどうかを多くの人が気にしているのか。

それは、有料老人ホームのうち介護付きは介護認定が必要なことや、有料老人ホームを管轄する法律が介護保険法や老人福祉法であることが関係しているのではないかと思っています。

きっとSNSで発信した人の多くが、
「有料老人ホームに入居しているひとのうち介護認定を受けている人には安否確認が必須だが、介護保険を利用していない人の場合は任意となる」
と勘違いしていたのではないか。

だから「契約書で見守りをしない旨を書いてあったらもうどうしようもない」と考える人もいたのではないかと、私は思いました。

SNS投稿する前には一呼吸置こう

なぜ、こんな勘違いが生まれてしまったのか。

それは、自分の働いている施設もしくは働いたことのある施設以外のことは、仕事をしながらでは知る機会も学ぶ機会も非常に少ないからではないかと思います。

介護職は多くの人がご存知の通り、非常に過酷な現場となっています。

少ない人手で多くの高齢者のお世話をしなければならず、その人たちへの責任も非常に重い。

そんな中で、専門家なのだから介護業界の全てを細かいことまで知っておけ、とは到底言えないし、そうすべきなんて思ってもいないです。

今回の事件は非常に痛ましいことであったと同時に、過酷な介護現場で働く人たちにとって介護保険制度の不備を考えさせられる事件であったことは間違いないでしょう。

だからこそ、多くの人が自分の意見を発信した。

しかし、そこには間違っていたり勘違いした情報に基づいた発信がなされ、それがあたかも事実化のようにどんどん広がっていった。

間違ったり、本来の意味とは違った解釈をしてしまうことは、誰にでもあると思います。

でも、専門家が発言することと言うのは真実と多くの人は思いがちです。

だからこそ、介護の専門家である私たちが介護について発信するときには、一度立ち止まってその情報が正しいのか考えてみてほしい。

SNSって自由じゃないの?っていう人もいるかもしれないけれど、専門分野の発言については、やっぱり責任はあると思うのです。

私は、介護分野に関してはこれからも責任もって発言していきたいと思います。

※トップ画はedarによるPixabayからの画像です。

考察
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この記事を書いた人
中村楓

山口県在住の介護福祉士&介護ライター。
わかりやすい言葉で誰にでも理解しやすい文章を書くのがモットー。
双子を含む3人の子育て真っ最中。
双子は口唇裂+口唇口蓋裂。
hide&X-JAPAN愛はすさまじい。

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